既視感

こんにちは。
餡子は好きだけど、餡子のことはなにも知らない井浦です。
そんな井浦が、なにも知らないが故の独自の視点で和菓子を語ってみたいと思います。
日本に土産は数あれど
「狭い日本そんなに急いで何処へ行く」は昔の交通標語ですが、そんな言葉が出てくるくらい日本は国土が狭いと言われています。とはいえ島国ですから、領海を含めると立派なもんですけどもね。そんな島国内で覇権を争ったりした歴史もあることから、地域ごとに根ざした多種多様な文化というものがあります。日本という一つの国という認識が定着したのは明治以降ですから(考えは様々なようですけども)、それまで藩という国のなかで言葉や食文化が育まれた影響が、今の方言や郷土料理になっていると僕は思っています。
それにも関わらず、やっぱり同じ「日本人だよね〜」と思うことが和菓子の世界ではチョイチョイ見受けられます。和菓子のブログを書いていると、まぁよくもこんなに和菓子の種類を作ったなと思うほど沢山の和菓子がありますし、洋菓子の素材を使った新しい和菓子を創り上げたりと食への意識が貪欲過ぎるやろと関心してしまいます。故に、逆に似過ぎている和菓子も見掛けるので、「日本人だよね〜」と思う、ということです。
今回は、僕の生まれ故郷である「福岡」にスポットを当てて、検証してみたいと思います。
如水庵の筑紫もちと桔梗信玄餅
和菓子の世界で「似ている和菓子」の代表格だと思われる、『如水庵の筑紫もち(つくしもち)』と『桔梗信玄餅』。似ているというか、「もう同じ和菓子だろ」と口にしてしまうほどのそっくりさん。写真で並べて見ても、よほどの愛好家でない限り見分けはつきません。
僕が『桔梗信玄餅』に初めて出会ったのは、社会人になって東京に出てきてからです。初めは頭が混乱しました。「え、これ筑紫もちですよね。さっき山梨のお土産って言ってませんでした?」って、お土産をくれた方に聞きましたもん。どうやらこの疑問は有名らしく、「それぞれ存在するんだよ」と教えてもらったのが衝撃的でした。
餅にきな粉までは全く同じようですが、黒蜜に若干の違いがあります。筑紫もちはサラッとあっさり、信玄餅はドロッと濃厚な蜜ですね。販売時期は信玄餅の方が数年早いようですから、「どっちが元祖なんだ!?」って論争になったときは、「信玄餅だよ」と教えてあげてください。
ちなみに僕は、地元贔屓で筑紫もちが好きです(笑)
博多ぶらぶらと赤福
昔は「そっくり」と思って揺るぎなかったですが、並べるとそうでもないですね・・・。あの時の強い思いはなんだったのか。そんな思いとは裏腹に、ネットでは同じように「似た和菓子」として取り上げてたりするので、僕の勘違いもあながち見当違いではないようで安心しました。
広義には同じ「あんころ餅」ではありますが、味の作りは別物ですね。同じこしあんですが、博多ぶらぶらのほうが甘さは控え目です。そのうえ餡子が先にこない作りなので、赤福よりはあっさり感じるのかも。こってり餡子を楽しみたいなら、赤福が断然オススメ。
和菓子として一級品
それぞれの地域で生まれたこの和菓子は、似てはいるけどどれもが一級品です。パチモン的ないい加減さはなく、どれも心がこもって美味しいと思います。変に対立させるのではなく、同じ日本人だからという発想の根源を感じ、限られた材料の中で「和」を損なわずに仕上げたこのお菓子たちを楽しめる幸せを大切にしたいですね。